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ZOZO前澤氏を退場させたことで、日本が失った「大きな可能性」③

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「100人に100万円」の本当の意味

 ここで前澤氏に戻りたい。前澤氏がバスキアの絵を123億円で落札したとき、世界中にYusaku Maezawaの名前がとどろいた。これを受けて、ホリエモンが「世界に名前を売るには、安いくらいの投資だ」とコメント。対して前澤氏は「売名行為などで落札したわけではない」と述べたが、意識的かどうかは別にして、筆者は「アートを使いこなす力」こそが、前澤氏の最も優れた点ではないかと思うのだ。

 それを象徴するのが、物議をかもした「一億円プレゼント企画」である。前澤氏のツイートをリツイートした人の中から、抽選で100名に100万円をプレゼントした、あの企画だ。「金持ちの道楽」「ばらまきで人気を買った」など、さまざまな批判の声が上がったが、彼らはことの本質を理解していないのだろう。

 実際にリツイートをして当選した100人の面々を見てみると、その多くがアートに携わっている人たちだった。もちろん、どこまでをアートに含めるかという議論はあるが、前澤氏には、明らかに新人のアーティストに投資をしようという意図があったはずだ。

 当たり前のことだが、投資とは「投資したもの以上の見返り」(リターン)を得ることが目的である。投資する対象としては、金融資本自体か、物的資本、人的資本がある。金融資本への投資は、利息や売却益がリターンであり、物的資本への投資は生産力増加によるリターンである。

 そして、人的資本への投資の見返りは、知識や経験を得ることにより、次なる再現性を生み出すリターンである。

 これらの中で一番難しく、しかし最も大きなリターンを得られるのが人的資本への投資である。金融資本への投資は、多くの金融商品がコモディティ化しており、すでに型が決まっていることから、リターンの幅もある程度決まっている。このご時世、全ての人が、あらゆる金融商品にアクセスできることを考えれば、金融商品は必然的にローリターンになることがわかるだろう(もちろん、突然100倍に化ける株などもあるにはあるが)。

 次に、物的資本への投資。これは、建物や機械などへの設備投資となる。競争優位性のある特殊な機械などを開発すれば効果的な投資とはなるが、モノである以上、世界で唯一にはなり得ず、類似品も出てくる。また、技術革新は日々行われていることから、時が経つにつれて陳腐化していく。ただ、投資してもゼロになるわけでもないことから、ミドルリスクミドルリターンといえるだろう。

 そして、一番のハイリスクハイリターンとなるのが、人的資本への投資である。人への投資は、その人が突然去ってしまえば何のリターンも生まない。入社三年目で社員が辞めてしまえば、その会社は多額の投資をほとんど回収できない。

 一方で「組織は人なり」の言葉の通り、優秀な人材を集めることができれば、経営環境が変わっても、事業を変化させながら対応させることができる。

 私も、ベンチャーキャピタル時代に1000人以上の起業家と接し、投資をしてきたが、ベンチャー投資の成否は、結局「人の目利き」なのだ。特にベンチャービジネスは、5年もすれば経営環境が変わり、変化を求められる。

 10年ももつビジネスはほとんどないのが現実だ。ソフトバンクが、ソフトウェア販売会社から通信回線に移り、携帯から投資ファンドにビジネスの中心を変えていっているのが分かりやすいだろう(これを業界では、軸足を変えるという意味で「ピボット」と呼ぶ)。