このVALUもそうであるが、物議をかもすベンチャーが増えた。倫理的な内容ももちろんだし、まずいのは法律的な観点において正当性が疑問視されている部分だ。
そして、スタートアップの世界は狭いから、内輪でポジショントークによる擁護があったりして、それがまた火に油を注いでいる状態である。
WELQの時も、AirbnbやUberを引き合いに出して、『時代が追いついていない』という言い分を目にした。(だいたいの場合、こういった発言はサービスを作っている張本人ではなくその周りの人によって行われる。この無責任な擁護がかえって批難を大きくしてしまうのだろう。)
まあ、確かにAirbnbもUberもある種グレーを走っている。タクシーや旅館業は法律による制約があるし、それを誠実に守っているかというとそうではない。ただ、じゃあグレーゾーンを走ることが全面的に肯定されるかというとそんなわけはない。『AirbnbもUberもそうだったじゃん』っていうのはあまりに上っ面をなぞった擁護だ。
『イノベーションはグレーゾーンから生まれる』というのは、それがUberとかAirbnbなどのように肯定されるのは、従来の法律の枠をテクノロジーの力で乗り越えてユーザーに価値を提供するものを指す言葉だ。今の時代の法律とその想定を超えた新しい概念が生まれたからこそ、時代が追いつかない、法律が追いつかないという話になるのであって、グレーを突っ走ることがイノベーションにつながるなんてとんでもない暴論だし、そういった方向性でグレーを許容するのは論点のすり替えみたいなものだ。筋が通っていない。
今問題になっているような法律スレスレのやり方でバカから金を巻き上げる仕組みはイノベーションではない。
WELQだって、様々な問題があるけど、これがユーザーへの圧倒的な利益を生み出していたら話は変わっていた。ただ、実際のところ、間違った情報が広まるというユーザーにとってしても最悪のパターンであったからこそ上場企業であるDeNAは廃止せざるを得なかったわけである。
ビジネスが倫理的であるべきだとは思わない。株式市場でバカを見て損をする人もいるし、サラ金に高い利息を払い続ける人もいる。それが問題だとは言わない。法律の範囲内で自分の判断によって損をする消費者がいるのはそいつが悪いだけだ。仮に、ターゲットが情弱であってもそれはそれで彼らのした判断の生んだ結果であって、倫理的かどうかなんかどうでもいい。
ただ、法律っていうのは世の人々の暮らしをよくするためのルールなわけであって、法律を守るなんて当たり前の話だ。『法に抵触しそうだけど時代が追いついてないだけだしいいよね』と考えるのはあまりに早計すぎる。時代が追いついていないと言っていいのは、ユーザーに圧倒的な利益をもたらしていて、法を変えた方が明らかに社会にとって有益であると断言できる場合のみだ。
法律はその時の社会の在り方に応じて変わっていく。だから法整備が追いついていない場合もある。ただし、法の穴を突いた誰かを不幸にするような仕組みは早急に法律で対処するべきだし、そういうものは根絶やしにすべきだ。
AirbnbもUberも、相互評価などの仕組みによって宿泊者や乗客が安心して他人の家に泊まる、車に乗る、ということができるようになったから堅い法律を変えるだけの流れになっているのであって、それだけの圧倒的な価値がないならただの法を守らないサービスでしかない。
VALUやCASHにそれだけの価値はあるの?
グレーゾーンを突き進むのが正しいと言えるのは、それだけの価値を提供できる場合じゃないの?
都合のいいときだけシリコンバレーの事例を引き合いに出して自分たちを正当化するのはダサいよ。
WELQのときもそうだったけど、『イノベーションは常に批判を伴うし時にグレーゾーンを突き進む』みたいな上っ面だけ拾ったこと言ってるVCやら経営者が多すぎるんだよ。浅い部分で自分たちを正当化してどうする。
— 起業家.comの代表 (@kigyoka_com) 2017年6月29日
海外の表層部分だけ拾って感化されているようでは何者にもなれない。