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カルロス・ゴーン氏の不正から考える組織論

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日産自動車のカルロス・ゴーン会長が自らの報酬を過少申告した疑いがあるとして、東京地検特捜部に逮捕されました。内部通報を受けての調査の末の逮捕です。

カルロス・ゴーン氏は、役員報酬を約50億円少なく申告したとして、金融商品取引法違反の容疑に問われています。

この事件の詳細は、今後の東京地検特捜部の捜査により明らかになると思いますが、今回は、組織論にスポットを当ててこの事件を見てみたいと思います。

1 そもそも組織論とは何か

そもそも組織論とは何かですが、古くはマックス・ヴェーバーが合理的な組織として官僚制を研究しており、その組織に見られる特徴として、権限の明確化や組織の階層化、文書による意思疎通などを挙げています。

現在、国の組織や一般企業の組織も概ねこのマックス・ヴェーバーの考えた合理化された組織となっており、この合理化された組織が世の中の中心的な役割を果たしている訳ですが、イノベーションのスピードの速い現代社会においては、この官僚制組織が妥当しないのではないかという意見も多い訳です。

つまり、組織を合理的に機能させるにはどのような仕組みにしたらいいのかを考えるのが組織論です。

ここを話すと長くなるので、話を元に戻して、今回のカルロス・ゴーン氏が逮捕された事件をもとに、組織論を考えてみましょう。

2 これまでのカルロス・ゴーン氏の業績

今回のカルロス・ゴーン氏の金融商品取引法違反容疑での逮捕を受け、日産自動車の西川廣人社長は、「権限の特定の個人への集中」がその原因の一つであると述べています。

言うまでもなく、この「特定の個人」とはカルロス・ゴーン氏の事を言っていますが、では、「権限の特定の個人への集中」は果たして本当に良くないものなのでしょうか。

カルロス・ゴーン氏はみなさんご存知の通り、過去に日産自動車をV字回復させています。当時はスーパースターのようにもてはやされました。ただ、大がかりなリストラも行い、その手法を否定的な見かたをする人も少なくありませんでした。

どんな物事にも良い面と悪い面がある訳で、彼が行った事が良いのか悪いのかはさておき、とにかく日産自動車をV字回復させた事だけは厳然とした事実です。

そして、これはカルロス・ゴーン氏が大きな権力を持っていたからそこできた事です。大きな権限がなければとてもできない事を彼は次々と断行していきました。

3 権力集中型がいいのか、合意形成型がいいのか

「権限の特定の個人への集中」が今回の事件の原因の一つである事は間違いないと思います。

スポーツ界でも色々と話題になりましたが、特定の個人が権力を欲しいままにすると、物事が正しい方向に進むかどうかはその個人のモラルに委ねられます。そして、人間は弱い生き物なので、巨大な権力が生まれると、多くの場合、そこに腐敗が生まれます。

では、どうすればいいのか。

答えを二つの側面から考えてみたいと思います。

1.組織の状況による側面

その組織が既存の価値観にとらわれず、大きく変わる事が求められているときには、「権限の特定の個人への集中」が必要であると思います。アメリカ合衆国第16代大統領のリンカーンであったり、トヨタ自動車の豊田章男氏であったり、組織がこのままでは立ち行かなくなりそうなときに、価値観を変えて組織を引っ張っていくリーダーが必要な場面では「権限の特定の個人への集中」が必要なのではないでしょうか。

一方、平時は、ガバナンスの効いた状態で、多くの視点を持って物事を進める体制をつくる事も大切です。多くの視点を持ち、コンセンサスをベースに物事を進めるという事は、そこに妥協の産物が生まれる可能性もありますが、そこは変革の重要性や優先度を皆が共通認識として持つ事によってある程度は回避できます。そして、「権限の特定の個人への集中」が起こらないので、モラルハザードも検知して防止できます。

2.時間的な側面

銀行員は、定期的に転勤があるという話を聞いた事はないでしょうか。ずっと同じ支店で同じ取引先と何年も仕事をしていると、癒着が生じて、不正融資や計画倒産などが行われたりします。それを防止するために、銀行員には定期的な転勤がある訳です。

長い事同じ現場にいれば、その現場の組織や仕組みが手に取るように分かるようになります。また、当然長く同じ現場にいればいるほど、そこにいる人間同士で深い人間関係も構築されていきます。良くも悪くも自分の庭のようになった環境では不正が起こりやすくなります。

これを排除するためには、いくら業績が優れている人であっても、決められた時期でその座を降りてもらう事も大事になってきます。もちろんオーナー社長は自分の財産を元手に経営を行っている訳ですから、これを失うのも増やすのもオーナー社長次第な訳で、そういった意味では権力を握っていてもいいのかもしれませんが、少なくとも、国や上場企業ではこのような仕組みは必要なように思います。

4 結局組織に求められるものとは

結局官僚制が機能している組織で権限が明確化されたとしても、上位の権力者になれば大きな権力を握る事になるので、不正が行われる可能性が生じます。また、官僚制組織は硬直化するので、イノベーションの妨げにもなります。

そのため、特に現代社会では、ただ単に官僚制組織にすれば全て解決という訳にはいきません。

ではどうすればよいのか。

よく不正が起こると、第三者委員会が立ち上げられたり、社外取締役が招かれたりしますが、そのような場当たり的な対応ではなく、組織が組織として最大限に機能する仕組みを予めつくっておく事が大切なのではないかと思います。

それは、柔軟にその場面に適したリーダーの登用ができる仕組みづくりであったり、サクセッションプランニングも考えた上で流動的に人的資源の活用ができる仕組みづくりだったりします。

また、仕組みがあってもそれを社員が受け入れる風土がないと組織がその変化を受け入れて動かないので、そのような風土を長い時間をかけて育てることも大切です。

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